こんにちは管理人の「カニパパ」です^^
冬の味覚の王様として知られるカニですが、スーパーや通販サイトを見ていると「マルズワイガニ」と「ズワイガニ」という二つの名前を目にすることがあります。
見た目が似ているようでどこか違う、値段も大きく異なるこの二つのカニについて、マルズワイガニとズワイガニの違いが何なのか、疑問に思ったことはありませんか。
どちらを選べば良いのか、味や旬、産地にはどのような特徴があるのか、また、よく聞く紅ズワイガニやオオエンコウガニとはどういう関係なのか、知りたいことはたくさんあるはずです。
特に、カニ缶の表示で「まるずわいがに」と書かれているのを見て、これが普段私たちが高級品としてイメージするズワイガニと同じものなのか、気になっている方も多いでしょう。
この記事では、そうした疑問をすべて解消するために、マルズワイガニとズワイガニの違いを、見分け方から値段、おすすめの食べ方まで、あらゆる角度から徹底的に比較・解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたはもうカニ選びで迷うことはありません。
それぞれのカニの魅力を深く理解し、ご自身の好みや用途に合わせて、賢くカニを選べるようになっているはずです。
◆このサイトでわかる事◆
- マルズワイガニとズワイガニの分類上の根本的な違い
- 見た目や甲羅、脚で見分ける具体的なポイント
- 味や食感、甘みの特徴とそれぞれに適した調理法
- 市場での値段の相場と価格差が生まれる理由
- 最も美味しく食べられる旬の時期と主な産地
- オオエンコウガニや紅ズワイガニとの関係性
- カニ缶の原料としてのマルズワイガニの役割
マルズワイガニとズワイガニの違いを5つの視点で比較
◆この章のポイント◆
- 分類や見た目での見分け方
- 気になる味や食感の違いとは
- 値段の相場とコストパフォーマンス
- それぞれの旬と美味しい時期
- 主な産地と生息域について
分類や見た目での見分け方
マルズワイガニとズワイガニ、この二つのカニは名前が似ているため混同されがちですが、実は生物学的な分類からして全く異なる種類のカニです。
この根本的な違いを理解することが、二つのカニを見分ける第一歩となります。
まず、私たちが一般的に「冬の味覚の王様」として認識しているズワイガニは、「クモガニ科」に分類されるカニです。
日本近海で獲れる本ズワイガニ(越前ガニや松葉ガニなど)や、カナダやロシアから輸入されるバルダイ種(大ズワイガニ)、オピリオ種などがこれに該当します。
一方、マルズワイガニは「オオエンコウガニ科」という、ズワイガニとは全く別の科に属するカニなのです。
つまり、両者は「ズワイガニ」という名前がついていますが、分類上は遠い親戚ですらない、赤の他人と言える関係性です。
この分類上の違いが、見た目の特徴にもはっきりと表れています。
誰でも簡単に見分けられるポイントをいくつかご紹介しましょう。
甲羅の形と色
最も分かりやすい違いは、その名の通り甲羅の形です。
ズワイガニの甲羅は、やや縦長の逆三角形に近い形をしています。
表面はゴツゴツしており、しっかりとした硬さがあります。
色は生の状態では暗い赤褐色をしていますが、茹でると鮮やかな朱色に変わります。
対してマルズワイガニの甲羅は、全体的に丸みを帯びた形状をしています。
「マル」という名前の由来がこの丸い甲羅にあると言われています。
表面は比較的つるっとしており、色は薄いオレンジ色やピンク色に近い色合いです。
脚の形状
次に注目すべきは脚の形です。
ズワイガニの脚は、すらりと長く、断面はやや平たい楕円形をしています。
この長い脚にぎっしりと詰まった繊細な身が、ズワイガニの魅力の一つです。
一方、マルズワイガニの脚は、ズワイガニに比べて短く、ずんぐりとしており、断面はほぼ円形です。
この脚の形状も、両者を見分ける上で非常に重要なポイントとなります。
大きさ
全体的な大きさにも違いが見られます。
もちろん個体差はありますが、一般的にズワイガニの方がマルズワイガニよりも大きく成長します。
特に、脚を広げた際の大きさは、脚の長いズワイガニの方が圧倒的に大きくなります。
これらの違いを表にまとめると、以下のようになります。
特徴 | マルズワイガニ | ズワイガニ |
---|---|---|
分類 | オオエンコウガニ科 | クモガニ科 |
甲羅の形 | 丸みを帯びている | 縦長の逆三角形 |
脚の形 | 短く、断面が丸い | 長く、断面が平たい |
色(生) | 薄いオレンジ色 | 暗い赤褐色 |
このように、分類という根本的な部分から、甲羅や脚の形といった外見まで、マルズワイガニとズワイガニには明確な違いが存在します。
スーパーの鮮魚コーナーや通販サイトの写真を見る際に、これらのポイントに注目すれば、間違うことなくお目当てのカニを選べるようになるでしょう。
まずはこの「見た目の違い」をしっかりとマスターすることが、賢いカニ選びの第一歩と言えます。
気になる味や食感の違いとは
見た目だけでなく、もちろん味や食感にもマルズワイガニとズワイガニには大きな違いがあります。
それぞれの特徴を理解することで、どちらが自分の好みに合っているか、またどのような料理に適しているかが見えてきます。
結論から言うと、繊細で上品な味わいを求めるならズワイガニ、しっかりとした食感とカニの風味を楽しみたいならマルズワイガニがおすすめです。
ズワイガニの味と食感
ズワイガニの最大の魅力は、その繊細かつ濃厚な甘みと、上品な旨味にあります。
特に、新鮮なズワイガニの刺身は、とろけるような食感と口の中に広がる甘みが格別です。
身の繊維は非常にきめ細かく、加熱するとふっくらと柔らかくなり、口の中でほろほろとほどけていくような食感が楽しめます。
カニ味噌も濃厚でクリーミーであり、通の間では珍重されています。
この上品な味わいを最大限に活かすためには、やはりシンプルな調理法が一番です。
- 刺身
- カニしゃぶ
- 茹でガニ、蒸しガニ
- 焼きガニ
これらの調理法は、ズワイガニ本来の繊細な風味を損なうことなく、その魅力を存分に引き出してくれます。
マルズワイガニの味と食感
一方、マルズワイガニの味わいは、ズワイガニに比べるとやや淡白であっさりしていると評価されることが多いです。
しかし、これは決して味が劣るという意味ではありません。
マルズワイガニの身は水分が多く、プリプリとした弾力のあるしっかりとした食感が特徴です。
この食感は、ズワイガニの繊細さとはまた違った食べ応えを与えてくれます。
そして、マルズワイガニの真価は加熱調理した際に発揮されます。
淡白な身は、加熱することで甘みと風味が増し、様々な料理とよくなじみます。
身がしっかりしているため、調理しても崩れにくく、料理の具材として非常に優秀です。
そのため、以下のような料理に最適です。
- カニクリームコロッケ
- パスタやグラタン
- チャーハンやピラフ
- 鍋物やスープ
特に、バターやクリーム、トマトソースといった濃厚な味付けとの相性は抜群で、カニの風味が料理全体に深みを与えてくれます。
カニ缶の原料として多用されるのも、この加工適性の高さが理由の一つです。
まとめると、ズワイガニは「素材の味を楽しむカニ」、マルズワイガニは「料理に活用して楽しむカニ」と考えることができます。
どちらが良い悪いということではなく、それぞれの個性を理解し、食べたい料理やシーンに合わせて選ぶのが最も賢い選択と言えるでしょう。
特別な日には奮発してズワイガニを、普段の食卓を少し豪華にしたい時にはマルズワイガニを、といった使い分けもおすすめです。
値段の相場とコストパフォーマンス
マルズワイガニとズワイガニを選ぶ上で、最も大きな判断基準の一つとなるのが「値段」でしょう。
この二つのカニには、明確な価格差が存在します。
なぜ価格が違うのか、それぞれの相場はどのくらいなのかを理解することで、納得感を持ってカニを選ぶことができます。
高級品としてのズワイガニ
ズワイガニは、一般的に高級食材として知られています。
特に、国産のブランドガニ(越前ガニ、松葉ガニなど)は、厳しい品質管理と希少性から、1杯数万円の値がつくことも珍しくありません。
輸入物のズワイガニ(バルダイ種やオピリオ種)は国産に比べると手頃になりますが、それでもマルズワイガニと比較すると高価です。
ズワイガニが高価な理由はいくつかあります。
- 漁獲規制と希少性: 資源保護のため、漁獲期間やサイズが厳しく制限されており、供給量が限られています。
- ブランド価値: 長い歴史の中で「冬の味覚の王様」としてのブランドが確立されており、高い需要があります。
- 品質: 繊細で濃厚な味わいは、他のカニでは代えがたいものがあり、その価値が価格に反映されています。
そのため、ズワイガニは贈答用や、お正月、記念日といった特別なハレの日のご馳走として選ばれることが多いカニです。
手頃で普段使いしやすいマルズワイガニ
一方、マルズワイガニはズワイガニに比べて非常にリーズナブルな価格で手に入ります。
通販サイトなどでは、冷凍のむき身や脚のセクションが数千円程度で販売されていることが多く、気軽に購入できるのが魅力です。
マルズワイガニが安価な理由は、主にその供給量にあります。
主な産地であるアフリカのナミビア沖などでは、比較的資源量が豊富で、大規模な漁業によって安定的に供給されています。
また、ズワイガニほどのブランドイメージがないことも、価格が落ち着いている一因です。
しかし、価格が安いからといって品質が悪いわけでは決してありません。
前述の通り、マルズワイガニにはしっかりとした食感と加熱調理への適性という、ズワイガニにはない独自の魅力があります。
この価格帯でカニならではの風味と食べ応えを楽しめるのは、マルズワイガニの非常に優れたコストパフォーマンスと言えるでしょう。
パスタやグラタン、カニクリームコロッケなど、普段の料理に少し加えるだけで食卓が華やかになります。
コストパフォーマンスで考える
このように、ズワイガニとマルズワイガニの価格差は、希少性やブランド価値、そして供給量の違いから生まれています。
「とにかく美味しいカニ刺しが食べたい」「特別な日を豪華に祝いたい」という目的であれば、価格は高くともズワイガニを選ぶ価値は十分にあります。
一方で、「カニの入った料理を手軽に楽しみたい」「家族みんなで気兼ねなくカニを食べたい」という日常的なシーンでは、マルズワイガニが圧倒的なコストパフォーマンスを発揮します。
どちらか一方が優れているというわけではなく、目的と予算に応じて最適な選択をすることが重要です。
それぞれの価格帯と価値を理解し、賢く使い分けることで、カニのある食生活をより豊かに楽しむことができるでしょう。
それぞれの旬と美味しい時期
食材の美味しさを最大限に引き出す上で、「旬」の時期を知ることは非常に重要です。
カニも例外ではなく、最も身が詰まり、味が良くなる時期が存在します。
マルズワイガニとズワイガニでは、この旬の時期にも違いがあります。
冬が旬のズワイガニ
ズワイガニの旬は、多くの人がイメージする通り「冬」です。
具体的には、日本近海での漁が解禁される11月上旬から、翌年の3月頃までが最も美味しい時期とされています。
この時期のズワイガニは、脱皮を終えてから時間が経ち、殻の中に身がぎっしりと詰まっています。
また、寒い海で生きるために栄養をたっぷりと蓄えているため、甘みや旨味も格別です。
特に、メスのズワイガニ(セコガニ、香箱ガニなどと呼ばれる)は、この時期にしか味わえない内子(未成熟卵)と外子(受精卵)を持っており、これもまた冬の珍味として人気があります。
ただし、ズワイガニは世界中の海に分布しており、産地によって旬が多少異なる場合があります。
- 日本海(松葉ガニ、越前ガニなど): 11月~3月
- ロシア・カナダ産(バルダイ、オピリオ): 主に冬から春にかけてが漁期ですが、冷凍品が通年流通しています。
- 紅ズワイガニ: 9月~翌年5月頃と漁期が長いのが特徴です。
生のズワイガニを味わいたいのであれば、やはり国産のものが手に入る冬が最高のシーズンと言えるでしょう。
通年楽しめるマルズワイガニ
一方、マルズワイガニには、ズワイガニのように明確な「旬」というものが、実はあまり意識されていません。
その理由は、マルズワイガニのほとんどがアフリカ南西部のナミビア沖など、南半球の国々から冷凍で輸入されているためです。
現地では年間を通して漁が行われており、最新の冷凍技術によって獲れたての品質を保ったまま日本に運ばれてきます。
そのため、私たちは季節を問わず、一年中安定した品質のマルズワイガニを手に入れることができます。
これは、旬が限られるズワイガニにはない、マルズワイガニの大きなメリットの一つです。
夏場に「カニが食べたい」と思っても、生のズワイガニを手に入れるのは困難ですが、マルズワイガニならいつでもその願いを叶えてくれます。
もちろん、現地の漁獲状況によって味が良い時期というものは存在しますが、消費者がそれを意識する必要はほとんどありません。
いつでも手軽に、安定した美味しさを楽しめるのがマルズワイガニの魅力なのです。
このように、旬の時期という観点から見ると、二つのカニの楽しみ方は大きく異なります。
「冬の訪れとともに、旬の味覚を心待ちにして味わう」のがズワイガニの楽しみ方だとすれば、「季節に関係なく、いつでも好きな時にカニ料理を楽しむ」のがマルズワイガニの楽しみ方と言えるでしょう。
この違いを理解しておくと、それぞれのカニとの付き合い方がより上手になります。
主な産地と生息域について
カニの味や特徴は、そのカニが育った環境、つまり産地や生息域に大きく影響されます。
マルズワイガニとズワイガニは、その主な産地と生息する海の深さが全く異なります。
この違いを知ることは、二つのカニの背景をより深く理解することにつながります。
日本の冬の幸、ズワイガニ
ズワイガニは、主に北半球の冷たい海に生息しています。
日本の食卓で馴染み深いのは、やはり日本近海で獲れるズワイガニでしょう。
山陰地方で獲れる「松葉ガニ」、北陸地方で獲れる「越前ガニ」などが有名で、これらは地域ごとにブランド化され、高い品質を誇ります。
これらの国産ズワイガニは、水深200メートルから600メートルほどの比較的浅い海の海底に生息しています。
日本以外では、ロシアのオホーツク海やベーリング海、カナダやグリーンランド沖の大西洋などでも大規模な漁が行われています。
これらの海域で獲れたズワイガニは、船上で急速冷凍され、日本にも多く輸入されています。
スーパーなどでよく見かける「本ズワイガニ」や「大ズワイガニ」といった表示のものは、これらの輸入品であることが多いです。
産地によって呼び名や多少の味の違いはありますが、いずれも冷たい海の恵みであることに変わりはありません。
遠いアフリカの海からやってくるマルズワイガニ
一方、マルズワイガニの故郷は、日本から遠く離れた海です。
現在、日本で流通しているマルズワイガニのほとんどは、アフリカ大陸の南西部に位置するナミビアやアンゴラ、そして南米のウルグアイといった国々から輸入されています。
これらの国々の沖合の、水深500メートルから1200メートルという、ズワイガニよりもさらに深い深海にマルズワイガニは生息しています。
光の届かない冷たい深海で育つため、その生態はまだ謎に包まれている部分も多いと言われています。
日本では全く漁獲されないため、私たち日本人がマルズワイガニを口にする場合、それは必ず輸入品ということになります。
現地の工場でボイル加工され、冷凍されたものが日本に届けられ、カニ缶の原料になったり、冷凍食品として販売されたりしているのです。
この産地と生息域の違いをまとめた表が以下になります。
項目 | マルズワイガニ | ズワイガニ |
---|---|---|
主な産地 | ナミビア、アンゴラ、ウルグアイなど(輸入品のみ) | 日本、ロシア、カナダ、アメリカ(アラスカ)など |
主な生息域 | アフリカ南西沖、南米南東沖の深海 | 日本海、オホーツク海、ベーリング海、大西洋など |
生息水深 | 約500m~1200m | 約200m~600m |
このように、ズワイガニが私たちにとって比較的身近な北の海の幸であるのに対し、マルズワイガニは地球の裏側とも言える遠い南の海の、さらに深い場所からやってくるエキゾチックな存在です。
普段何気なく食べているカニ缶のルーツが、遥かアフリカの深海にあると考えると、少しロマンを感じるかもしれません。
マルズワイガニとズワイガニの違いを知って賢く選ぶには
◆この章のポイント◆
- マルズワイガニの正体はオオエンコウガニ
- 似ている紅ズワイガニとの関係性
- おすすめの食べ方と調理法の違い
- カニ缶の原料として使われる理由
- マルズワイガニとズワイガニの違いを理解して楽しもう
マルズワイガニの正体はオオエンコウガニ
これまで「マルズワイガニ」という名前で解説してきましたが、実はこのカニには「オオエンコウガニ」という正式な和名があります。
スーパーの表示や通販サイトでは「マルズワイガニ」という名前が一般的に使われていますが、その正体を知ることは、カニへの理解を一層深める上で重要です。
では、なぜ「マルズワイガニ」という通称が広く使われるようになったのでしょうか。
その背景には、日本の食文化と流通の歴史が関係しています。
オオエンコウガニが日本に輸入され始めた当初、その丸い甲羅の形と、ズワイガニに似た脚の形状から、消費者に分かりやすく特徴を伝えるために「マル(丸)ズワイガニ」という商品名が付けられました。
高級で人気のある「ズワイガニ」の名前を借りることで、消費者に親しみやすさを感じさせ、手に取ってもらいやすくするという販売戦略があったと考えられます。
この呼び名が市場に定着し、現在では正式名称である「オオエンコウガニ」よりも、「マルズワイガニ」の方が一般的になってしまったのです。
ちなみに「エンコウ」とは、手の甲が赤く長い妖怪「猿猴(えんこう)」に由来するとも言われ、カニのハサミの形が猿猴の手に似ていることから名付けられたという説があります。
食品表示法では、オオエンコウガニを「まるずわいがに」と表示することが認められています。
そのため、カニ缶や冷凍食品の原材料名には「まるずわいがに」と記載されていることがほとんどです。
これは決して偽装表示ではなく、国が認めた正式な表示方法なのです。
しかし、消費者としては、「マルズワイガニ」と「ズワイガニ」が名前は似ていても生物学的には全く別の種類である、という事実を知っておくことが大切です。
「マルズワイガニ」はあくまで通称・商品名であり、その正体は「オオエンコウガニ」という深海ガニであると覚えておきましょう。
この知識があれば、例えば高級料亭で「ズワイガニのコース」を頼んだのにマルズワイガニが出てきた、といったような誤解やトラブルを避けることができます。
また、友人や家族にカニの知識を披露する際にも、「マルズワイガニって、本当はオオエンコウガニっていうんだよ」と教えてあげれば、一目置かれるかもしれません。
名前の由来や背景を知ることで、食材への愛着も一層深まるのではないでしょうか。
似ている紅ズワイガニとの関係性
マルズワイガニとズワイガニの違いを調べていると、もう一種類、よく似た名前のカニが登場します。
それが「紅ズワイガニ(ベニズワイガニ)」です。
この紅ズワイガニの存在が、カニの世界を少し複雑に、そして面白くしています。
マルズワイガニ、ズワイガニ、そして紅ズワイガニ。この三者の関係性を整理してみましょう。
ズワイガニの近縁種、紅ズワイガニ
まず、ズワイガニと紅ズワイガニは、同じ「クモガニ科」に属する、非常に近い親戚(近縁種)です。
見た目もよく似ていますが、いくつかの違いがあります。
- 色: 紅ズワイガニは、その名の通り、茹でる前から鮮やかな紅色をしています。ズワイガニは生の状態では褐色です。
- 生息域: 紅ズワイガニは、ズワイガニよりもさらに深い、水深800メートルから2500メートルほどの深海に生息しています。
- 味と食感: 水分量が多く、身はみずみずしく、非常に甘みが強いのが特徴です。ズワイガニに比べると旨味はやや少ないとされますが、その甘さは格別です。
- 値段: 漁獲量が多く、ズワイガニに比べると安価で取引されます。
紅ズワイガニは、その甘みの強さから根強いファンが多く、特に産地である鳥取県境港や富山県などでは、地元で愛される味覚となっています。
三者の関係性を整理する
ここで、マルズワイガニ(オオエンコウガニ)を加えて三者の関係を整理すると、以下のようになります。
カニの種類 | 分類 | 主な特徴 | 関係性 |
---|---|---|---|
ズワイガニ | クモガニ科 | 繊細な旨味と甘み。高級品。 | 紅ズワイガニと近縁種(親戚) |
紅ズワイガニ | クモガニ科 | 強い甘みとみずみずしさ。比較的手頃。 | ズワイガニと近縁種(親戚) |
マルズワイガニ | オオエンコウガニ科 | しっかりした食感。加熱調理向き。安価。 | ズワイガニ、紅ズワイガニとは全くの別種(他人) |
このように、ズワイガニと紅ズワイガニは「親戚」ですが、マルズワイガニは「他人」ということになります。
消費者が混乱しやすいのは、「マルズワイガニ」と「紅ズワイガニ」が、どちらもズワイガニより安価で、加工品に使われることが多いという共通点があるためです。
しかし、その出自は全く異なります。
紅ズワイガニは、カニクリームコロッケや冷凍のカニグラタン、あるいはカニの身のほぐし身として販売されていることが多く、その甘みと手頃な価格から加工品に適しています。
この三者の違いを理解しておけば、例えば「このカニ缶、ズワイガニより安いけど、紅ズワイガニなのかな?いや、原材料を見たらマルズワイガニ(オオエンコウガニ)だ」というように、より正確に商品を識別できるようになります。
カニの世界は奥が深いですが、この三者の関係性さえ押さえておけば、あなたも立派なカニ通と言えるでしょう。
おすすめの食べ方と調理法の違い
マルズワイガニとズワイガニ、それぞれの味や食感、価格帯の違いを理解したところで、次はその魅力を最大限に引き出すための「食べ方」について考えていきましょう。
どちらのカニも、その特性に合った調理法を選ぶことで、美味しさが格段にアップします。
「素材」を味わうズワイガニの調理法
ズワイガニは、繊細な身の甘みと上品な旨味が命です。
そのため、できるだけ手を加えず、素材そのものの味をシンプルに楽しむ調理法が向いています。
高価なカニだからこそ、その価値を存分に味わい尽くしたいものです。
1. 刺身(カニ刺し)
鮮度の良い生のズワイガニが手に入ったなら、絶対に試したいのが刺身です。氷水にさっと通すことで身が引き締まり、花が咲いたように美しく開きます。とろりとした食感と、口の中いっぱいに広がる濃厚な甘みは、カニ刺しでしか味わえない至福の体験です。
2. カニしゃぶ
薄く切った昆布で出汁をとったお湯に、生の脚の身を数秒くぐらせる食べ方です。表面にだけ軽く火が通り、中はレアの状態になることで、生の甘みと加熱された香ばしさの両方を楽しむことができます。ポン酢や特製のタレでいただくのが一般的です。
3. 焼きガニ
脚や肩肉を殻付きのまま、炭火やグリルで香ばしく焼き上げます。加熱することで甘みがさらに凝縮され、殻から立ち上る香りが食欲をそそります。醤油を少し垂らして焼くのも絶品です。
4. 茹でガニ・蒸しガニ
カニ料理の王道です。シンプルに塩茹でしたり、蒸したりすることで、カニ本来の旨味が引き立ちます。ふっくらと茹で上がった身は、何もつけなくても十分に美味しくいただけます。濃厚なカニ味噌も、この食べ方で楽しむのが一番です。
ズワイガニ料理のポイントは「引き算の調理」。余計な味付けをせず、カニが持つ本来のポテンシャルを信じることが、最高の美味しさにつながります。
「料理」で活きるマルズワイガニの調理法
一方、マルズワイガニは、そのしっかりとした食感と、加熱することで増す風味を活かした「料理」の具材として大活躍します。
手頃な価格なので、普段の食卓に気軽に取り入れられるのも嬉しいポイントです。
1. カニクリームコロッケ
マルズワイガニのしっかりとした身は、ホワイトソースと混ぜ合わせても存在感を失いません。トロリとしたクリームの中から、カニの食感と風味が感じられるカニクリームコロッケは、マルズワイガニの特性を活かした代表的な料理です。
2. パスタ・グラタン
トマトソースやクリームソースといった濃厚な味付けにも、マルズワイガニの風味は負けません。身が崩れにくいため、見た目にも豪華なパスタやグラタンを作ることができます。
3. チャーハン・ピラフ
ご飯と一緒に炒めても、プリプリとした食感は健在です。カニの赤い色が彩りとなり、食卓を華やかにしてくれます。カニから出る出汁がご飯一粒一粒に染み渡り、風味豊かな一品に仕上がります。
4. 鍋物・スープ
キムチチゲやブイヤベース、トムヤムクンなど、様々な国の鍋物やスープの具材としても最適です。カニから良い出汁が出るのはもちろん、煮込んでも身がパサつきにくく、最後まで美味しくいただけます。
マルズワイガニ料理のポイントは「足し算の調理」。他の食材や調味料と組み合わせることで、その魅力が一層輝きます。
このように、二つのカニにはそれぞれ得意なステージがあります。
それぞれの個性を理解し、適材適所の調理法を選ぶことで、カニ料理のレパートリーは無限に広がるでしょう。
カニ缶の原料として使われる理由
私たちが日常的にスーパーマーケットで目にする「カニ缶」。
手軽にカニ料理を楽しめる便利な食材ですが、その原材料表示をよく見てみると、「まるずわいがに」と書かれていることが非常に多いことに気づきます。
なぜ、高級なズワイガニではなく、マルズワイガニがカニ缶の主役なのでしょうか。
その理由は、マルズワイガニが持つ「加工品としての適性」にあります。
1. 安定した供給と手頃な価格
最も大きな理由は、やはり価格と供給量です。
第一章でも触れた通り、マルズワイガニはナミビア沖などで年間を通して安定的に漁獲されており、資源量が豊富です。
そのため、漁期が限られ高価なズワイガニに比べて、はるかに安価で大量に原料を確保することができます。
消費者が手頃な価格でカニ缶を購入できるのは、このマルズワイガニのおかげなのです。
もしカニ缶の原料がすべて国産のズワイガニだったら、おそらく現在の何倍もの価格になってしまうでしょう。
2. 加工に適した身質
マルズワイガニの身質も、缶詰加工に非常に向いています。
ズワイガニの身は非常に繊細で、加熱や加工の工程で崩れやすく、パサつきがちです。
一方、マルズワイガニの身は繊維が太くしっかりしており、弾力があります。
そのため、缶詰にするための高温高圧殺菌(レトルト殺菌)を経ても、身が崩れたりパサついたりしにくく、カニらしい食感を保つことができるのです。
缶を開けた時に、きれいな形のままゴロッとしたカニの身が出てくるのは、この身質の強さによるものです。
3. 風味の変化
マルズワイガニは、生の状態ではやや淡白な味わいですが、加熱することで甘みと風味が増すという特徴があります。
缶詰の製造工程で加熱されることにより、マルズワイガニのポテンシャルが引き出され、缶詰として食べた時にちょうど良い風味になるのです。
サラダやサンドイッチ、パスタなどに混ぜ込んでも、他の食材に負けないカニの風味をしっかりと主張してくれます。
カニ缶の種類と表示
ちなみに、カニ缶にはマルズワイガニだけでなく、紅ズワイガニを使ったものや、ごく稀に本ズワイガニを使った高級品も存在します。
一般的に、価格は「本ズワイガニ > 紅ズワイガニ > マルズワイガニ」の順になります。
缶のラベルには、JAS(日本農林規格)によって定められた品質表示があり、身の状態によって「一番脚肉」「赤身」「フレーク」などに分類されています。
「一番脚肉」が最も高級で、脚の肉がそのまま詰められています。
このように、マルズワイガニがカニ缶の原料として多用されるのは、価格、供給量、身質という三つの要素が、缶詰という製品の特性と見事にマッチしているからです。
私たちの食卓に手軽なカニの美味しさを届けてくれる、まさに縁の下の力持ちのような存在と言えるでしょう。
マルズワイガニとズワイガニの違いを理解して楽しもう
これまで、マルズワイガニとズワイガニの違いについて、分類、見た目、味、値段、旬、産地、そして調理法といった様々な角度から詳しく見てきました。
この記事を最後まで読んでくださったあなたは、もう二つのカニの違いについて誰かに説明できるほどの知識を身につけたはずです。
最後に、これまでの内容を振り返りながら、私たちがどのようにこの二つのカニと付き合っていけば良いのかをまとめていきましょう。
最も重要なことは、マルズワイガニとズワイガニは、どちらが優れていてどちらが劣っているという関係ではない、ということです。
彼らはそれぞれ全く異なる個性と魅力を持った、別の食材なのです。
高級腕時計と、丈夫で機能的なデジタルウォッチを比べるようなもので、それぞれに良さがあり、使うべきシーンが異なります。
ズワイガニは、その繊細で奥深い味わいから「特別な日のご馳走」という役割を担っています。
お正月や誕生日、大切な人へのおもてなしなど、ここぞという場面で登場すれば、その場を華やかに彩り、忘れられない食の思い出を作ってくれるでしょう。
素材そのものが持つ至高の味を、じっくりと堪能するのがズワイガニの醍醐味です。
一方、マルズワイガニは、その手頃な価格と調理への適性から「日常に彩りを添える万能選手」と言えます。
パスタやサラダ、コロッケやチャーハンなど、いつもの料理に少し加えるだけで、食卓はぐっと豊かになります。
そのしっかりとした食感と風味は、家庭料理をワンランク上の味に引き上げてくれる力を持っています。
マルズワイガニとズワイガニの違いを正しく理解することは、私たちの食生活をより豊かに、そして賢くすることに繋がります。
用途や予算、そしてその日の気分に合わせて、自信を持って「今日はズワイガニにしよう」「今日はマルズワイガニでパスタを作ろう」と選べるようになることが、本当の意味でカニを楽しむということなのかもしれません。
これからは、スーパーの鮮魚コーナーやカニ缶のラベルを見る目が、きっと変わってくるはずです。
本日のまとめ
- マルズワイガニとズワイガニは分類からして全く別の種類のカニ
- ズワイガニはクモガニ科、マルズワイガニはオオエンコウガニ科に属する
- マルズワイガニの正式和名はオオエンコウガニである
- 甲羅の形はズワイガニが逆三角形、マルズワイガニが丸い
- 脚はズワイガニが長く平たい、マルズワイガニが短く丸い
- ズワイガニの味は繊細で上品な甘みが特徴
- マルズワイガニは弾力のある食感で加熱すると風味が増す
- 値段はズワイガニが高価で、マルズワイガニは手頃
- ズワイガニの旬は冬、マルズワイガニは通年楽しめる
- ズワイガニの産地は日本近海など北半球が中心
- マルズワイガニはアフリカ沖などからの輸入品のみ
- ズワイガニは刺身やしゃぶしゃぶなどシンプルな調理がおすすめ
- マルズワイガニはパスタやコロッケなど料理の具材に最適
- カニ缶の多くは安価で加工に適したマルズワイガニが原料
- 紅ズワイガニはズワイガニの近縁種でありマルズワイガニとは別種
参考サイト
カニ缶にも使われているマルズワイガニってどんな蟹? | 海鮮おすすめ通販館
ズワイガニとは?特徴や呼び名の違いについてカニ専門店が解説! – 蟹専門店マルツ公式オンラインショップ
【かに本舗】ズワイガニと紅ズワイガニの違いは?特徴・味・価格などを比較! -匠本舗情報局【たくじょー!】
【贅沢食べ比べ】まるずわいがに vs 紅ずわいがに | 全国ローカル缶詰専門店 「カンダフル」
マルズワイガニってどんなカニ?ズワイガニとの違いや美味しい食べ方も紹介! | 市場暮らし
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